「合わなかった機能:その1」の続きです。
(この記事でストーリーに関するネタバレはありませんが、マップやシステムのネタバレがあります。)
その1の後半の「クエスト(依頼)」 「どこでもセーブ」「敵のユニーク品ドロップ」について書いていきます。
◆クエスト(依頼)
クエストをこなしていくゲームは自分でもプレイするので、このゲームでも導入しようと思っていたのですが、「自由な探索」という意味では合っていませんでした。
このゲームでは自発的に行う「好奇心からの探索」が大切なので、クエストのために受動的に動き回る形式の遊び方は不自由さを感じさせる原因になってしまい、かなり早い段階で没になりました。
名残として、ゲーム中にクエストに近い形式のサブイベントが3~4個あります。
これらは、他のゲームで言うところの「実績/トロフィー」に当たるもので、クリアのために必須ではありません。
内容も、素材集めなどの単純作業や戦闘ではなく、隅々まで探索して、慎重に進めれば必ずクリアできるものだけに絞りました。(とはいえ、一つやり過ぎたイベントがありますが…)
他の没になったシステムでも同じですが、それ自体が面白いシステムでも、ゲームに合っているかどうかで活きるかどうかが変わってくるので、思い切ってカットするのも大事なのかな、と思います。
◆どこでもセーブ
探索のストレス軽減のために、β版制作のかなり後半まで、どこでもセーブが出来る仕様になっていました。
自分の好みとしても、基本的にはどこでもセーブが出来るゲームの方が気軽にサクサクプレイ出来て楽しいと感じます。
前作、前々作でもセーブはどこでも出来る仕様にしました。
ですが、今回のゲームでどこでもセーブが出来ると、「緊張感からの解放」が損なわれることに制作途中で気付きました。
ただでさえ敵シンボルが避けやすくなっているのに、探索面でも緊張感が薄いと、「適度なストレスからの解放」というゲームの楽しみがなくなってしまいます。
常にセーブを繰り返しながら探索を進めているとゲームが作業的になりがちで、結界に辿り着いた時の安心感もありません。
とはいえ、どこでも中断が出来ないと、ある程度の時間を確保しないと遊べないゲームになってしまいます。
腰を据えてプレイするコンシューマゲームならともかく、個人制作のゲームでその重みはいかがなものか…と考えた結果、「中断セーブ」を取り入れることにしました。
この機能を導入することにより、ゲーム内での結界の価値が上がり、多少なりとも「緊張と緩和」のリズムを作ることが出来た…はずです。
ただ、途中でセーブが出来なくなった代わりに、デスペナルティは軽めに設定しました。
どこでもセーブが出来る仕様で作っている間は、「魔物に倒される」以外の死に方ではゲームオーバーになっていたのですが、罠やスリップダメージで死んだ場合も拠点へ戻れるように変更しました。
魔石が足りないと復活できない仕様も候補にあったのですが、没になりました。
あくまでも、「どこでもセーブ」は緊張感を維持するために取り除いたシステムであって、全滅によってプレイを中断してしまうような仕様にはしたくなかったからです。
◆敵のユニーク品ドロップ
単調になりがちな雑魚戦を楽しくする一つの要素として、ランダムドロップがあります。
特に、敵からしか手に入らないユニーク品がドロップすると、雑魚戦の期待度が上がります。特定の雑魚を狩る、という楽しみも増えます。
このシステムには、そういったプラス要素しか存在しないように思えますが、これも「マップ探索ゲーム」という方針を崩さないために、今回のゲームではカットしました。
このゲームにおいて、敵シンボルは「障害物」あるいは「罠」でしかありません。
基本的には避けて、気が向いたら戦うくらいの想定で作っています。
その「障害物」「罠」である敵に1つでもユニーク品のドロップを入れてしまうと、「もしかして雑魚敵も戦った方がいいのでは?」という不安が生まれてしまいます。
そうなると、今まで「障害物」でしかなかった敵シンボルが「取りこぼし要素」となって、常に探索から気をそらす存在になってしまう可能性があります。
そのため、ボス以外の敵のドロップ品は素材と消耗品に限定しました。
これを徹底することで、「雑魚を狩るのは美味しくない」ということが分かり、安心して雑魚敵をスルーできるようになることを狙っています。
実際は、ソウルと魔石が得られるので、完全にスルーはしないと思いますが、少なくとも積極的に狩りに行こうという選択肢はなくなると思います。
また、ドロップで得られる素材の用途先も消耗品に限り、「素材集め」の要素が発生しないようにしています。
「素材集め」は、没になったクエストシステムと同様に、受動的にマップを動き回ったり戦闘する遊びなので、「好奇心から探索して発見する」ことを主軸にしたこのゲームには合っていないと判断しました。
◆その他削ったものとか削らなかったものとか
他にも色々と削ったシステムはあるのですが、大体は同じように「探索から気がそれる」ということが理由です。
制作の最初期には、街を拠点としたバージョンがあったのですが、導入部からダンジョン探索への移行をスムーズにするためにカットしました。
街があると、ダンジョン探索の前に「町民との会話」「ツボやタンスを調べる」「ショップを確認する」といった行程が入ります。
この行程も一応「探索」ではありますが、「街」はこのゲームのメイン部分ではありません。そこに開幕の10分を費やしてしまうのは、ゲームの紹介に当たる導入部としては適切ではないと判断しました。
また、進行度によって街の人の話が変わったりすると、探索している間も街が変化していないか気になってしまいますし、定期的に街に長時間滞在しなくてはいけなくなり、ゲームのテンポも損なわれます。(エメルダや仲間との会話に変化が少ない理由も同じ)
総合的に見て、今回のゲームに合ってないと判断したので、街の存在自体が没になりました。
いわゆる「小さなメダル」のようなコレクト要素もカットしました。
「メダル」は、探索の報酬を分割することが出来るので、配置する分には楽でいいのですが、その分「取りこぼし」を強く意識させてしまう可能性があります。
装備品の取りこぼしは単体で完結していますが、「メダル」は一定数集めないと効果が出ないので、探索中に「集めなくては」という心理的な束縛が他のアイテムよりも強く出る可能性があります。
コレクション要素が探索要素を邪魔するような状況が生まれやすいと判断したので、没になりました。
なお、素材も同じように数を集めなければ効果を及ぼしませんが、「メダル」と違って「一定量集めればそれ以上は必要ない」という部分から「取りこぼし」を意識しにくいので、採用しています。(が、あくまでも素材集めが必要ない程度のサブ要素)
また、図鑑…というよりも、図鑑の「コンプ率表示」は、「探索領域の広さが逆算出来てしまう」=「未知への好奇心が削がれる」という理由で採用しない方がいいと考えていました。
しかし、図鑑に関しては少し特殊で、サブ要素ながらも達成率や詳しい情報が欲しい人が多数派ではないかと想定して、コンプ率も含め、そのまま搭載しています。